600億円の球場より心に残ったもの

チームSKM 佐々木千博です。
 
 
今週、久しぶりに北海道を訪れています。
そして行ってきました。
初エスコンフィールド。

試合も満塁ホームランの逆転に延長10回のサヨナラと
大いに盛り上がり、楽しかった!


さらに、その三日前に、甲子園球場(夏の甲子園)
にも行ってきました。

新旧2球場で野球を楽しんだ経験や気づきから、
今回はエスコンフィールドを軸に3回シリーズで
お届けします。

エスコンで気づいた「サービス」と「ホスピタリティ」の違い

プロ野球・北海道日本ハムファイターズの新本拠地
「エスコンフィールドHOKKAIDO」を核とする
北海道ボールパークFビレッジの総投資額(建設費・総工費)は約600億円です。

正直、驚きの連続でした。

最上段の席でもグラウンドが見やすい。
ブルペンは観客から見える。
球場の中には立見スペースだけでなく、ブランコ席まである。

野球を見ながら温泉に入れる。
ホテルに泊まれる。(次行くときは体験したい)

卓球までできる。
場内には子どもが楽しめる列車も走っています。

14時開始の試合なのに、朝10時から入場できる。

試合が終われば、ヒーロー選手が光るディズニーのパレード
のような台車(ミッキーはいません)に乗って球場内を一周する。


その後にはAFTER GAMEスペシャルライブがあり、
さらに有料ですがグラウンドウォークまである。
(これも行ってきました!)


「これは、ものすごい施設をつくったな」


そう思いました。


しかし今日は、そんな大仕掛けとは別に、
もっと、小さな出来事を紹介したいと思います。


「初めて来た人」が、一目で分かる仕掛け

エスコンには、初めて訪れた人がもらえる
「FIRST VISIT」のシールがあります。


考えてみれば、ただのシールです。

大きな設備投資が必要なわけでもありません。


ところが、このシールを身につけていることで、
スタッフとの間に自然なコミュニケーションが生まれます。

「初めてなんですね」

「楽しんでいってくださいね」

そんな一言が生まれる。


コメントの付箋シールももらいました。


今、あらゆる事業がサービス化してきていますが、
これはサービス業に携わる私たちにとって、
とても興味深いことだと思います。



普通、「初めてのお客様」は少し面倒な存在になりがちです。


場所が分からない。

仕組みが分からない。

何度も質問される。



だから企業側は、案内板を増やしたり、
FAQを用意したり、アプリで説明したりします。



もちろん、それも大切です。



しかしエスコンは、初めてのお客様を、

「説明が必要なお客様」

ではなく、

「今日が記念日のお客様」

に変えているように感じました。


同じ事実でも、意味づけがまったく違います。


サービスとホスピタリティは、同じではない

「サービス」と「ホスピタリティ」は何が違うでしょうか?

サービスとは、ある意味で約束された価値を、安定して届ける仕組みです。


見やすい座席。
分かりやすい案内。
清潔な施設。
スムーズなモバイルオーダー。
おいしい食事。


これらは、サービス品質として非常に重要です。



一方、ホスピタリティは少し違います。


目の前のお客様を見て、

「この方には、今どんな一言があればうれしいだろう」

と考えるところから始まります。


同じマニュアルを全員に提供するのではなく、相手によって少し変わる。


そこに「人」と「人」の関わりがあります。


だからホスピタリティは、設備だけでは完成しません。

どれほど豪華なホテルを建てても、スタッフが無関心なら、そこに温かさは生まれない。

逆に、大きな設備投資がなくても、ちょっとした気配り、
一言の声掛けによって、その場所が特別な思い出になることがあります。



お客様が覚えているのは「機能」より「感情」

経営者や管理職の皆さんに、少し思い出していただきたいのです。

自社の商品やサービスについて会議をすると、私たちはどうしても、

「何を提供するか」

を考えます。


機能を増やす。
品質を上げる。
営業時間を延ばす。
システムを便利にする。


もちろん必要です。


しかし、お客様が半年後、一年後に覚えているのは、それだけでしょうか。


むしろ、

「あの人が親身になってくれた」

「困っていたときに声を掛けてもらった」

「初めて行ったのに歓迎された」


そんな感情の記憶ではないでしょうか。


サービスは、「何をしてもらったか」として記憶されます。

ホスピタリティは、「どう感じたか」として記憶される。


そして、人は意外と「何をしてもらったか」は忘れても、
「どう感じたか」は長く覚えています。



ホスピタリティは「良い人」に任せてはいけない

ここで経営として難しい問題があります。

「それなら、社員にもっと気を利かせてもらおう」

で終わってはいけないということです。


ホスピタリティを個人の性格やセンスだけに任せると、

「あの人に当たれば素晴らしい。でも別の人だと残念」

というサービスになります。



経営者や管理職の仕事は、
人の温かさが発揮されやすい仕組みをつくること
ではないでしょうか。


「たのしんでもらいたい」というスタッフ文化を創ること。


そして、FIRST VISITのシールは、その典型です。

「初めてのお客様には声を掛けなさい」


と100ページのマニュアルを書くより、
一枚のシールをつくった方が、スタッフは気づきやすい。



気づけば、声を掛けられる。

声を掛ければ、会話が生まれる。



つまり、

ホスピタリティを命令するのではなく、ホスピタリティが生まれる環境を設計する。

ここに経営の仕事があると思うのです。
丸一日体験して、何人かの球場の人とも話をしてみて、
エスコンフィールドは最初からその設計で出来ていると感じます。



あなたの会社にも「一枚のシール」はありませんか

エスコンフィールドで考えさせられたのは、

「もっと設備投資をしよう」

ということではありません。



むしろ逆でした。


自社のお客様が、

少し不安になる瞬間。
少し寂しく感じる瞬間。
誰かに気づいてほしい瞬間。


そこに、私たちは気づけているだろうか。


そして、社員がその瞬間に気づきやすくなる
「小さな仕組み」をつくれているだろうか。


という問いです。


何百億円という施設より、一枚のシールと一言の声掛けが心に残ることがある。

だからサービス経営は面白いのだと思います。


優れたサービスは、お客様を満足させる。
優れたホスピタリティは、お客様の記憶に残る。


そして、その記憶の積み重ねが、やがて
「また行きたい」「また会いたい」というブランドになっていく。




次回(次週)は、さらに視点を広げます。

14時から始まる野球の試合を、
なぜ朝10時から夜20時まで楽しめるようにするのか。


エスコンフィールドは、どうやら「野球の3時間」
を売っているのではなさそうです。

「お客様の10時間」を設計している。


次回は、その仕組みから「顧客時間をどう増やすか」
というサービス経営を考えてみたいと思います。



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