理念より強い「裏の理念」が、御社にもありませんか?

チームSKM 佐々木千博です。


いまMBAで「企業理念と社会的価値」に関するクラスを受けています。

 

その授業の中で、

「企業は何のために存在するのか?」
「利益と社会的価値は、どのような関係にあるのか?」

そんなことを改めて考えています。


そこで、少し古くなってきた話ではありますが、
ふと思い出した事件があります。


ビッグモーターの保険金不正請求問題です。

事故車両の修理を請け負いながら、
車を意図的に傷つけるなどして修理費を膨らませていた。


報道された当時、多くの方が、

「ひどい会社だ」

「コンプライアンスがなっていない」

「利益至上主義の末路だ」


と感じたと思います。
私も思いました。


しかし「企業理念と社会的価値」という視点から改めて考えてみると、
この事件には、もっと怖い問題が潜んでいるように思います。

 

■ 本来、何のための仕事だったのか?


自動車修理という仕事には、明確な社会的価値があります。


事故で傷ついた車を直す。

安全に走れる状態に戻す。

事故に遭って不安を抱えるお客様に安心してもらう。



つまり、

「困っている人の車を元の状態に戻し、安全・安心を提供する」


こと(社会的価値)が、この仕事の本来的な価値です。

その結果としてお客様から対価をいただき、売上が生まれ、利益が残る。




本来なら、

 

社会的価値
 ↓
顧客価値
 ↓
売上
 ↓
利益


という順番ですね。



ところが、ビッグモーターの問題では、この順番が逆転しました。


車を直した結果、売上が上がる。

ではなく、

売上を上げるために、車を傷つける。


こうなった瞬間、その企業は「価値を生み出す存在」から、
「価値を奪う存在」へと反転します。

 

■「利益を追求したこと」が悪いのではない


ここで誤解したくないのは、
利益を追求すること自体が悪いわけではないことです。


企業は利益を出さなければ存続できません。

働くメンバーに給与を払い、設備投資をし、
新しい商品をつくり、より多くのお客様に
価値を届けるためにも利益は必要です。



私はむしろ、健全な利益は、
「社会に価値を提供できている」という一つの証拠
とも言えると思います。


問題は、
「価値を生み出した結果として利益を得る」

ことと、
「利益を得るためなら価値を壊しても構わない」

ことは、まったく違うということです。



■ 社員は「理念」より「評価」を見ている

そして、この事件から私が最も考えさせられるのが、ここです。


多くの会社には企業理念があります。

「お客様第一」
「社会に貢献する」
「誠実である」
「人を大切にする」

素晴らしい言葉が並んでいます。


しかし社員は、本当にその言葉だけを見て行動しているでしょうか。


実際には、

「何をすると褒められるのか」

「何をすると昇進するのか」

「どんな数字を毎日追及されるのか」

「目標未達のとき、上司から何を言われるのか」

「どんな人が会社で評価されているのか」


こうした日常から、

「この会社が本当に大切にしているもの」

を敏感に感じ取っています。


極端に言えば、
壁に「お客様第一」と書いてあっても、
会議では売上しか聞かれない。


お客様のために正しい判断をしても、数字が悪ければ叱責される。

無理をしてでも数字をつくった人が出世する。

そんなことが続けば、会社の本当の理念は、「お客様第一」ではなく、

 

「数字を達成した者が正義」

になっていきますね。



■ 会社には「表の理念」と「裏の理念」がある

ここで怖いのは、悪い社員が突然大量発生するわけではない
ということです。

会社には『掲げている理念』『実際に組織を動かしている理念』

があると思うのです。


ここでは後者を、あえて「裏の理念」と呼びたいと思います。


経営者がどれだけ、

「人を大切にしよう」
「お客様を大切にしよう」

と言っていても、

評価制度、KPI、会議、上司の言動が
別のメッセージを発していれば、社員はそちらを信じます。


なぜなら、その方が自分の給与、評価、昇進に直接影響するからです。


つまり、

 

社員は「会社が言っていること」より、
「会社が報いること」を見ていると言えるかもしれません。


これはビッグモーターだけの話ではありません。

 

■ あなたの会社では、どちらを選ぶでしょうか?

ここで一つ、経営者やリーダーの皆さんに問いがあります。

 

もし皆さんの会社で、

「理念を守ること」と「今月の数字を達成すること」

のどちらかしか選べない状況になったとき、
社員はどちらを選ぶでしょうか。


そして、その答えを決めているのは、


理念手帳でしょうか。
朝礼での唱和でしょうか。

それとも、

日々の会議、評価制度、目標設定、そして上司の言葉でしょうか?


■ 理念は「言葉」ではなく「経営システム」

 

今回改めて感じたのは、

企業理念とは、きれいな言葉を掲げることではないということです。

 

理念
 ↓
戦略
 ↓
KPI
 ↓
評価
 ↓
会議
 ↓
上司の意思決定と言動
 ↓
現場の意思決定と行動


ここまで一本につながって、初めて理念は会社を動かし始める。

 

「理念浸透」というと、理念研修をしたり、
理念カードを配ったり、朝礼で唱和したりする会社もあります。


もちろん、それにも意味はあります。


しかしそれ以上に大切なのは、
その理念通りに行動した人が、
本当に報われる会社になっているか?

 

ということではないでしょうか?


ビッグモーター事件は、特殊な企業で起きた
特殊な事件として片付けることもできます。


しかし、


「数字を追いかけているうちに、
 何のために仕事をしているのか分からなくなる」

という現象そのものは、多くの会社で起こり得ることです。


だからこそ、この事件を他人事にせず、

「私たちの会社の“本当の理念”は何だろう?」

と、一度立ち止まって考えてみることが大切ではないでしょうか?


表裏のない理念実践企業が伸びる時代です!


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