甲子園は100年かけてつくった。エスコンは最初からつくろうとしている。
チームSKM 佐々木千博です。
先々週の金曜日からのエスコンフィールド体験3回
シリーズの最終回です。
これまで2回にわたり、
サービスとホスピタリティ、
そして「顧客時間」の設計について考えてきました。
エスコンフィールドに訪問した3日前には、
私の地元 西宮の甲子園球場に、
「夏の甲子園」の応援に行ってきました。
最終回は、この甲子園球場との対比も含めて、
視座をぐっとあげて、時間軸を長くとって
文化を創るという観点で考えてみます。
顧客体験は、やがて文化になる
冒頭にも書いたように、今回比較したいのは、
阪神甲子園球場です。
甲子園は1924年(甲子の年)開場。
100年以上の歴史を持ちます。
改修はあれど、古い球場です。
一方、エスコンフィールドは2023年開業。
まっさら、最新鋭の球場です。
歴史の長さだけを見れば、比較になりません。
でも、だからこそ面白い。
甲子園は、100年かけて「意味」を積み上げてきた球場です。
エスコンは、その意味をこれから積み上げていく球場です。
そして私は、この二つを見比べながら、
ブランドとは、広告でつくるものではなく、
体験の蓄積によって生まれるものではないか?
と改めて感じました。
甲子園は「球場」ではなく「物語」になっている
甲子園という言葉を聞いて、何を思い浮かべるでしょうか。
高校球児の涙。
阪神ファンの大声援。
アルプススタンド。
土、天然芝
ツタ。
名勝負。
家族との観戦の思い出。
甲子園のすごさは、設備が優れていることではありません。
むしろ設備だけを比較すれば、
新しい球場の方が快適な部分はたくさんあります。
はっきりいって、甲子園球場の席は狭い。
夏は無茶苦茶、暑い!
雨が降ったら濡れる。
雨でしたが、エスコンの方が、無茶苦茶快適でした!
設備もグルメも充実。
それでも「甲子園で観たい」と思う人がいる。
甲子園は特別なのです。
なぜでしょうか。
そこには、
「ここで観る意味」
があるからです。
甲子園は、単なる場所ではなくなっています。
たくさんの人の記憶が重なり、物語となり、やがて文化になった。
これは、お金を出してすぐにつくれるものではありません。
雨でもスケジュールに影響ないし、
高校球児の体の負担も考えてエスコンに大会の場所を
変えましょう!とも、まずなりません。
100年という時間が創った伝統と文化があります。
エスコンは「体験」から歴史をつくろうとしている
一方で、エスコンには100年の歴史がありません。
しかし、私はエスコンに「未来の記憶をつくる」
という意図・意思があるように感じました。
見やすい座席。
見えるブルペン。
立見スペース。
ブランコ席。
卓球台。
球場内を走る列車。
野球を見ながら入れる温泉。
ホテル。
試合後のライブ。
光る車に乗るヒーロー。
グラウンドウォーク。
そして、初来場者を歓迎するファーストビジットシール。
どれも、ひとつだけを見れば、単なる「設備」であったり
単なる「サービス」です。
しかし、これらを積み重なると、
「楽しかった」
だけでは終わりません。
「子どもの頃、お父さんとエスコンに行った」
「初めて見たプロ野球があそこだった」
「試合後にグラウンドを歩いた」
という個人の物語になっていきます。
野球を観に行った。場所はエスコンだった。
ではなく、
子ども時代の想い出はエスコン。
エスコンで野球を見た。グルメ楽しんだ。
エスコン・Fビレッジのイベントに参加した。
野球はあまり見なかったけど、大好きな場所はエスコン。
そんな物語が何千、何万、何百万と蓄積されたとき、
そこに「文化」が生まれるのではないでしょうか。
文化は「理念を掲げる」だけでは生まれない
これは企業経営でも同じだと思います。
多くの会社が、理念やビジョン、バリューを掲げています。
「お客様第一」
「挑戦を大切にする」
「仲間を尊重する」
どれも大切な言葉です。
でも、言葉を掲げただけでは文化にはなりません。
例えば、
「挑戦を大切にする会社です」
と言いながら、失敗した社員を強く責める。
「対話を大切にします」
と言いながら、会議では上司しか話さない。
「お客様第一です」
と言いながら、現場にはお客様のために動く裁量がない。
これでは、理念と体験が矛盾します。
社員が会社の文化を理解するのは、
日々、何を経験したか。
そこからです。
組織文化も「体験 → 記憶 → 物語」でつくられる
私は、文化は次のように形成されていくと考えています。
体験 → 記憶 → 物語 → 積み重ね習慣化 → 文化
例えば、ある社員が新しい提案に挑戦した。
結果は失敗した。
そのとき上司が、
「やってくれてありがとう。次は何を変えようか」
と言った。
本人は、その出来事を覚えています。
やがて後輩に、
「この会社は、挑戦して失敗してもちゃんと受け止めてくれるよ」
と話すかもしれません。
一つの体験が記憶になり、
その記憶が物語として語られ、
同じような行動が繰り返される。
そうして初めて、
「この会社は挑戦する会社だ」
という文化ができる。
理念は言葉だけで浸透するのではありません。
理念と一致した体験が繰り返されることで浸透する。
甲子園球場はそれを積み重ねて、
球場の一つとしての「甲子園球場」ではなく、
「甲子園球場」になった。
誰も「全国高等学校野球選手権大会」を観に行くと言いません。
高校球児も「全国高等学校野球選手権大会」を目指していません。
行くのは「夏の甲子園」であり、
高校球児が目指すのも「夏の甲子園」です。
エスコンは、甲子園球場と違う体験を創ることで、
北広島市と一緒に、単なる北広島市にある球場
ではなく「エスコンフィールドHOKKAIDO」
を目指すのだろうと思っています。
管理職は「文化の演出家」でもある
では、経営者や管理職には何ができるでしょうか。
私は、管理職の役割は「正しいことを伝える人」
理念を体験に変える人。
例えば、
会議で誰の意見を拾うか。
失敗した部下に最初になんと言うか。
お客様のために現場が工夫したとき、どう評価するか。
成果が出たとき、誰を称えるか。
困っている社員に、どう声を掛けるか。
これらの小さな場面が、社員にとっての「FIRST VISITシール」になります。
会社が本当に何を大切にしているのかは、
そして、社員が後輩に語りたくなる出来事を、
それが組織文化をつくる管理職の仕事ではないでしょうか。
あなたの会社に「語り継がれる話」はありますか
最後に皆様に聞いてみたいことがあります。
あなたの会社には、
社員が語り継いでいる物語がありますか。
創業時の話でもいい。
お客様を助けた話でもいい。
社員の挑戦を守った話でもいい。
危機をみんなで乗り越えた話でもいい。
もし社員同士で語られる物語が何もないとしたら、理念はまだ「
甲子園には100年以上の物語があります。
エスコンは今、一つひとつ新しい物語をつくっている最中です。
企業も同じです。
100年の歴史がなくてもいい。
今日、お客様にどんな体験を届けるか。
今日、社員にどんな体験をしてもらうか。
そこから未来の文化は始まります。
ブランドも、組織文化も、最初はたった一つの体験から生まれる。
その体験が記憶になり、
記憶が物語になり、
物語が次の世代へ受け継がれていく。
経営とは、目の前の売上をつくるだけではなく、
未来に語り継がれる体験を、今日つくること
なのかもしれませんね。
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