人と向き合うことは、自分と向き合うこと

チームSKM 上村です。

先日、ある経営者の話を聞く機会がありました。

テーマは「人を雇うこと」

そして「人と向き合うこと」

 

その内容は決して綺麗な成功談ではありませんでした。

 

信頼していた仲間に裏切られたこと。

人を信じるのが怖くなったこと。

社員との関係に悩んだこと。

そして、自分自身が感情的になり、人を傷つけてしまったこと。

 
良いことも、格好悪いことも含めて語られたその話から、
私は改めて「理念経営とは何なのか」を考えさせられました。

 

 

「人を雇っていた。でも、人を育てていただろうか」

少しそのお話を振り返ってみます。


創業後、事業は少しずつ大きくなっていきました。
仲間が増え、できる仕事も増え、売上も伸びていく。

 
一見すると順調に見えました。

 

ところが、信頼していた仲間との間で、
大きな問題が続けて起こりました。

経営者から見たら「裏切り行為」と思える内容。 

「なぜ自分ばかり、こんな目に遭うんだろう」
「もう人なんて信じられない」

そう思ったそうです。

 

でも、時間が経って振り返ったときに、少し違う景色が見えてきた。

 
社員の給料を払わなければいけない。

売上をつくらなければいけない。

会社を成長させなければいけない。

 
数字ばかりを追いかけていたことに気付きました。


もちろん、彼なりに人にも向き合ってこられていた。
懇親会でもNo2の方から「社長はとても良い人で優しい」という
率直な評価もいただいていました。

 

しかし、このようなことが続き

「人を雇うことはしていた。でも、人を育てることはできていただろうか」

という問いに行き着きます。

 

問題を起こした人に「あの人が悪かった」
だけで終われば、自分は何も変わりません。

 

なぜそうなったのか。


自分の関わり方はどうだったのか。

会社の仕組みはどうだったのか。

本当に相手の声を聞けていたのか。

 
そこから、自分自身に矢印を向け始めます。

 

 

関係性をつくるところから、会社をやり直した

そこから始めたのは、派手な改革ではありませんでした。

 
月に一度、みんなで食事をしながら話をする。
時には仕事を離れて一緒に遊ぶ。

 
そうやって少しずつ、社員との関係をつくり直していきました。

 

そして、その中で会社の理念も、
経営者一人で考えるのではなく、社員と一緒につくっていきました。

 

自分たちは誰を幸せにしたいのか。
お客様だけなのか。

 

働く仲間は?

その家族は?

地域の人たちは?

 

何度も話し合う中で、

 「自分たちだけが幸せになるのでもなく、
 お客様のために自分たちが犠牲になるのでもない。
 関わる人たち全てと共に豊かになっていこう」


という考え方が、会社の共通言語になっていきました。

 

一人の友人を、会社のみんなで支えた

その理念が本当に試される出来事もありました。

学生時代からの友人が、心身の調子を大きく崩していました。

食事もまともに取れず、生きていくことそのものがしんどくなっている。

 

そんな状態だったそうです。

 

その友人を会社で受け入れるかどうかという話になりました。

 

思うように仕事が進まないかもしれない。

周囲にも負担がかかるかもしれない。

 

効率だけを考えれば、
採用をするという選択肢にはならないかもしれない。

 

でも、その時に立ち返ったのが、自分たちでつくった理念でした。


「理念に『共に』という言葉がありますよね。
 だから私は共に幸せをつくるということを考えていきたいです」

「この人と一緒に幸せになるには、どうすればいいんだろう」


というような発言が従業員の口から出てきたのです。

 

そして雇用するという決断をされました。

そして経営者一人ではなく、社員のみんなで考えながら関わり続けたそうです。

そして時間をかけて、その友人は少しずつ元気になっていきました。

 

やがて一人で店を任せられるようになり、
後輩を教え、お客様とも関われるようになった。

 

最近では、普通に食事ができるようになり、
プライベートも充実してきたそうです。

 
このエピソードを聞いた時、
この会社が大切にしてきた理念が、
単なる言葉ではなかったことがよく分かります。

 

しかし、一番大きな課題は自分自身だった

しかし、話はここで終わりません。

むしろ今回、一番心に残ったのはここからでした。


その経営者には、自分でも認める大きな課題がありました。

感情が高ぶると、言葉が強くなることです。
本人に悪気がなくても、経営者の言葉は思っている以上に重い。


会社のNo.2からも、

「社長、自分で思っている以上に言葉のパンチ力がありますよ」

という趣旨のことを言われたそうです。

 

そして例会の最後、
その経営者は、


「皆さん、もう少し私に時間をいただけますか?」


といって会場の中央正面に移動されました。

 

そして、

自分が過去に感情的な言葉をぶつけてしまった仲間たちに謝りました。

例会をつくる過程で強く反発してしまった人。

以前、ある出来事を誤解し、強い言葉をぶつけてしまった人。

厳しいフィードバックをくれた人に対して、

「そんな言い方ないじゃないですか」

「もういいです」

と感情的になってしまったこともあったそうです。

 

その一つひとつを振り返り、
「あの時は申し訳なかった」
と、大勢の前で頭を下げました。


私は、この姿がとても印象に残りました。


経営者だから間違えないのではありません。

 

経営者だって、腹が立つ。

傷つく。

人の言葉を素直に受け取れないこともある。

 

しかし、
自分の未熟さに気づいたときに、それを認めて謝れるか。


ここに、その人の強さがある。

彼の姿を見て強くそう感じました。

 

本番3日前。そこから夜中3時まで話し続けた

実は、この例会そのものも、
決して順調につくられたものではなかったそうです。

本番のわずか3日前。

それまで準備してきた報告内容に対して、仲間から厳しい意見が出ました。

場合によっては、内容を大きく作り直さなければならない。

 
「今さらそんなことを言われても」


当然そう思います。

 

経営者本人も感情的になりました。

かなり激しくぶつかる場面もあったそうです。

それでも、準備に関わった仲間は言いました。

 
「今さら」じゃない。

「今から」やれることもある。

 
せっかく多くの人が話を聞きに来てくれる。
格好の良い話だけをして終わるのはもったいない。
本当に今、向き合わなければならないことを話そう。

 
そこから直前まで、
オンラインでの話し合いが続きました。

例会の前日も夜中の3時まで議論をされたそうです。


時には喧々諤々。
ほとんど喧嘩のようになることもあったそうです。


それでも、経営者仲間は逃げずに話し続けられました。
なぜそこまでできたのでしょうか。

 

私は、

本当にどうでもいい人には、そこまで言わないからだ

と思います。

 

もっと良くなってほしい。
この人なら変われる。
この人とこれからも一緒にやっていきたい
そう思うから、耳の痛いことも言う。


言われる側も、本当はしんどい。
でも、その言葉から逃げず、自分と向き合う。


例会で語られた「人と向き合う」というテーマを、
実はその準備のプロセスそのものが体現していたのだと思います。

 

働きやすさだけでは、良い会社にはならない

今回の話を聞きながら、私自身にも大きな気づきがありました。


働きやすい会社をつくることは大切です。
働きがいをつくることも大切です。
理念をつくることも大切です。


でも、それ以前にあるのが、
「関係性」です。

経営者と社員。

上司と部下。

社員同士。


関係性があるから、耳の痛いことを言える。
関係性があるから、本音で話せる。

 

そして理念があるから、意見がぶつかったときにも、

「私たちは何を大切にするのか」

という場所に戻ることができます。

 

だから理念浸透とは、
経営者が理念を何度も社員に「伝えること」だけではないのだと思います。

理念を使って、社員と対話すること。

 

そして時には、

経営者自身が理念からズレていないかを、
社員や仲間から問い返してもらうこと
そこまでできて初めて、理念は会社の共通言語になっていくのではないでしょうか。


人と向き合う。


その言葉は簡単ですが、実際にはものすごくしんどい。

なぜなら、人と本気で向き合えば向き合うほど、

 

最後には必ず、

 「では、自分はどうなのか」

という問いに戻ってくるからです。

 

人と向き合うことは、自分と向き合うこと。

今回の話から、そんなことを強く感じました。



皆さんの会社では、
社員とどれくらい本音で話せているでしょうか。

そして、耳の痛い言葉を社員や仲間から言われたとき、
皆さんはそれを受け止められているでしょうか。


私自身も、改めて考えていきたいと思います。

 

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