批判的態度、人に向けるか?コトに向けるか?

前号で、上村さんが「批判的態度」について
森信三先生の修身教授録(いい本です。オススメ)
から学びながら、検討・発信してくれました。

私も別の観点で「批判的態度」について
触れてみたいと思います。

一般的には「批判的態度」の人はいても、
「批判的態度が大事」と言っている人は少ない
印象があります。

しかし、では「悪」なのか?
というと、私は決してそうは思っていません。

批判的態度は、毒にも薬にもなる。
その方向性によって組織に大きく異なる影響
をもたらすものと思っています。


■批判的態度とは?

まず、今号のメルマガにおける「批判的態度」の定義
を明確にしておきます。批判的態度とは、
物事を無条件に受け入れるのではなく、
疑問を持ち、検証し、評価する姿勢です。

この批判的態度を何に対して発揮するか?
によって、その価値と影響は大きく変わると考えているので、
その話をこれからしていこうと思います。


■「人」に対する批判的態度

「あいつはいつも遅刻する」
「彼の説明は分かりにくい」
「彼女は細部に注意が足りない、ミスが多い」

このように人そのものを批判の対象とする態度は、
組織に悪影響をもたらすことが多いと考えます。

なぜでしょうか?

人に対する批判は、しばしば自分を
批判の枠外に置く傾向があります。

「自分は違う」または「関係ない」
という前提のもとで他者を批判することは、
自己の成長機会を失わせます。

また、批判される側は防衛的になり、
本質的な問題解決よりも、批判からの自己防衛に
労力を費やすようになって改善に向かわないことも
多いものです。

自分を枠外においた批判的態度になってしまうと、
人に向けられた批判が「学びの姿勢」
を損なうこともあると考えます。

他者の欠点に焦点を当てることで、その人から
学べる価値ある知見や経験を見逃してしまいます。


■「コト」に対する批判的態度

一方で、プロセス、システム、方法論、
出来事に向けられた批判的態度は、
組織の成長や成果創出に不可欠です。

「この会議の進行方法はもっと効率化できるのではないか」
「この決定プロセスにはどんなバイアスが潜んでいるか」
「このプロジェクトの遅延にはどんな構造的な問題があるのか」
「指導方法に漏れ抜けはないか?」
「議論に論理の飛躍はないか?」

このように「コト」に焦点を当てた批判的態度は、
クリティカルシンキングの基盤となります。

クリティカルシンキングとは、
情報や主張を慎重に分析し、多角的に検討して、
合理的な結論や判断に至るための思考法です。

「コト」に対する批判的態度は、
このクリティカルシンキングの実践の第一歩と考えます。

クリティカルシンキングは、以下のような効果
が期待できます。

 イノベーションの種を蒔ける

 前例踏襲や惰性からの脱却の起点になる

 リスク発見と対応に貢献する

 多様な視点を尊重する文化につながる
 (多面的に考えるため)


■「自分」に対する批判的態度

自分自身に対する批判的態度は、
真の成長の源泉になります。
自分を客観視し、見つめ直すことが問われます。
傲慢さではなく、謙虚さが求められます。

自らの言動、思考パターン、意思決定を
客観的に見つめ直す勇気は、謙虚さがないとできません。

「私は本当にベストを尽くしているか」
「自分の思い込みはないか」と自問することで、
盲点に気づき、新たな可能性が開けるのではないでしょうか?


なお、勘違いして欲しくないのですが、
自己批判は自己否定ではありません。

むしろ自分に軸があったり、自信があるからこそ、
批判的に自分を見る余裕があると言えると思います。

私自身、まだまだ未熟ですが、若い頃は、
人から言われることも、自分で客観視することも、
自己弁護につながることが多かったです。


今は、以前よりも人のアドバイスも聞けるように
なりましたし、自分の思考を、客観的に否定してみたり
することも出来るようになりました。
多少、自分の軸が出来てきたのではないか?
と思います。



■まとめると、

批判的態度そのものに、いいも悪いもありません。
活用力と活用の方向性が重要と考えます。

リーダーである私たちは、

批判的態度を「人」ではなく「コト」や「自分」に向ける。

組織に「人」と「コト」をしっかり分ける風土を根づかせる。
 リーダーとしてはしっかり分けて話す。
 (これが混同する組織は、正直未熟です)

過去の批判・否定で終わるのでなく、
 よりよくするためにという未来志向の表現にする。
 例:「〇〇すると、より良くなるのでは?」

自分自身は、「コト」への批判を積極的に受け入れる背中を見せる。

クリティカルシンキングのスキルを組織内で育てる
 (方向性が正しくても、力不足では発揮できないため)


お互いを「人」として尊重しながら、「コト」に対する
対立や批判を恐れない組織文化、人間関係のリスクを恐れず、
「コト」について徹底的に議論できる組織が
本当の心理的安全性のある組織ですし、それが、
真のイノベーションを生み出す土壌となります。


批判的態度を正しく発揮して、
いい組織を作っていきましょう!