あの伊那食品工業も学んだ二宮尊徳の仕法

前号では、二宮尊徳の言葉「遠きをはかる経営」と
圧倒的社風×業態開発企業 伊那食品工業を
紐付けたお話をお届けしました。


今日は、もう少し広く二宮尊徳の取り組みを
振り返って、現代の経営への置き替えを
行ってみたいと思います。


二宮尊徳は、江戸時代末期の荒廃した農村(現代でいえば
債務超過企業のようなもの)を600村も改善・V字回復させ、
藩の再建に大きな成果を上げました。

その二宮尊徳の手法は「報徳仕法」と呼ばれています。


報徳仕法の主な概念と、企業経営への応用について
これから見ていきたいと思います。


■徹底した現状分析と計画立案

報徳仕法の第一歩は、徹底した現地調査です。
二宮尊徳は復興を始める前に、地域の実情を
詳細に把握したそうです。

これは現代的にいえば、外部環境分析、
内部環境分析ですね。

正確な現状把握をした上で「仕法」と
呼ばれる詳細な復興計画を立てました。

企業でいえば、再生計画の策定です。
私は、企業再生のご支援もしているのですが、
この環境分析(現状把握)が極めて
重要なのは同じですね。


■「分度」の概念、財務管理

報徳仕法の重要な概念の一つが「分度」です。

これは自分の実力を知り、
それに応じて生活の限度を決めることです。
二宮尊徳は「入りを量り、出を制す」形で、
領主にも厳格な緊縮を求めたのです。

企業経営に当てはめると、適切な予算管理と
財務規律の維持に相当しますね。

企業再生でも収益計画は保守的に考え、
無駄な費用の削減はしっかりします。


■ 「推譲」の精神と社会的責任

「推譲」も報徳仕法らしい重要な概念ですね。
これは余剰を自身や子孫のために蓄積する
だけでなく、社会全体にも還元します。

現代では、CSR(企業の社会的責任)や
ESG経営の考え方にも通じますね。

人財育成や組織開発、研究開発に取り組むなど
「遠きをはかる経営」とも通じますね。

私の三方未来よし経営(R)でも、
三方よし+未来への恩送りという概念
がありますが、二宮尊徳からの学び
も大いに影響を受けています。


■人財育成と動機づけ

二宮尊徳は、勤勉な農民を表彰し、農具を
副賞的に与えるなど、人々の意欲を喚起する
工夫をしていたようです。また仕事量だけでなく、
働く動機の誠実さを重視しました。

現代に置き換えると人事評価システムや
従業員のモチベーション管理に通じますね。

ただ数字だけでなく、従業員の努力や成長を
適切に評価して成果を出すことが大事ですね。


■中長期的視点と持続可能性

報徳仕法は、短期的な利益ではなく、中長期的な
持続可能性を重視しました。例えば、五常講という
相互扶助の仕組みを通じて、低利融資を行い、
地域経済の自立を促しました。

現代でいえば、長期的な成長戦略や、
ステークホルダーとの良好な関係構築
の重要性も言っていますね。

ちなみに、五常講の考え方は、
信用金庫という協同組織金融機関の
成り立ちの一つとされています。

■倫理観と経営理念

報徳思想の根底にある「至誠」「勤労」
「分度」「推譲」という4つの理念は、
企業の経営理念や行動指針に通じます。

高い倫理観に基づいた経営は、
長期的な企業価値の向上につながると
いうことも言えるかと思います。

報徳仕法は、200年以上前に生まれたもの
ですが、その本質は現代の企業経営にも
十分に適用可能な考え方ですね。

財務規律、社会的責任、人材育成、長期的視点、
そして倫理観。これらを大切にして、
持続可能な三方未来よし経営を実現していきましょう♪