シェアド・リーダーシップの実践知

チームSKM 吉田です。


前回のブログでは、
組織に必ず現れる「2・6・2の法則」と、
人数が増えるほど一人ひとりの貢献度が下がる
「リンゲルマン効果(社会的手抜き)」に
ついてお話ししました。

今回のブログでは、
この構造的な課題を打破するヒントとして、
私が約20年前に100人規模の地方工場の責任者を
務めていた際に経験した、「火災」のエピソードから
「シェアド・リーダーシップ」の本質を紐解きます。

それは乾燥した冬の寒い日のことでした。
工場の隣接地で近隣の方が行っていた野焼きが
風にあおられ、工場敷地近くの草木に火の手が
あがったのです。

事務所にいた私はその匂いに気づき、
場所の特定を急ぎました。
火元へ向かうと、煙で視界が遮られる中、
野焼きをしていた高齢の女性が腰を抜かして
動けなくなっていました。

「大変なことになっている」と直感しました。

緊迫した状況でしたが、
私の部下たちは驚くべき行動を見せました。

一人は即座に敷地境界の金網フェンスをよじ登って
女性の救助に向かい、安全な場所へ誘導。

別の者たちは工場建屋の消火栓を開け、
ホースを取り出して消火活動の準備、そして消火へ。

また別の者は消防への通報と、消防車の誘導準備を
開始しました。

私はその状況を見ながら、
他の従業員の安全確保と安全な場所での待機を
指示しました。

驚くべきは、これらの行動の多くが誰の指示でもなく、
自然に生まれた役割分担だったことです。

消防が到着したときには、火災はほぼ鎮火していました。



< 「リーダーが一人」ではない組織の状態>
~ シェアド・リーダーシップが機能している現場~

この「その瞬間に最も適した人がリーダーになる」状態こそが、
シェアド・リーダーシップの本質です。

従来のリーダーシップは、
特定の一人のリーダーがチームを牽引するスタイルですが、
シェアド・リーダーシップは、
チームメンバーそれぞれがリーダーシップを発揮し、
リーダーの役割を共有している組織の状態を指します。

状況に応じて専門性を持つメンバーが主導し、
他のメンバーはその方針を尊重してフォロワーに回る。
このようにリーダーとフォロワーの関係が
流動的に入れ替わるのが最大の特徴です。

火災現場での部下たちは、
まさに「救助」「消火」「通報」「誘導」「安全確保」という
各局面で、最も動ける人が瞬時にリーダーとなり、
他の者がそれを支えるという循環を起こしていました。


<なぜ、彼らは「自律的」に動けたのか?>
 心理的安全性と当事者意識の正体~

このエピソードを組織開発の視点で分析すると、
リンゲルマン効果
(誰かがやるだろうという依存)を
克服できた理由が見えてきます。

当事者意識と責任の共有
 メンバー一人ひとりが
 「自分も組織の成果(この場合は人命救助と鎮火)に
 責任を持つ当事者である」
 という意識を持っていました。

行動が承認される文化
 「勝手な真似をするな」と叱責される不安がなく、
 各自の判断と行動が受け入れられる雰囲気が
 日常から醸成されていたのです(心理的安全性)。

「陰の立役者」の存在
 普段は控えめで目立たないメンバーであっても、
 特定の場面で驚くべき才能を発揮することがあります。
 彼らのような「陰の立役者」が輝ける場があることが、
 組織の対応力を高めるのです。


< 2・6・2の法則を「流動化」させる>
 中間6割が動き出す組織の条件~

シェアド・リーダーシップは、
上位2割だけが動く組織をつくるのではなく、
「中間6割」が自然に動き出す組織をつくる考え方です。

上位2割がきっかけをつくり、
中間6割がそれに続いて動くという流れが、
現場で自然に発生するのです。

(もちろん下位2割の存在も忘れてはいけません。)

強い組織とは、
カリスマリーダーが一人で引っ張る組織ではなく、
状況に応じて誰もがリーダーになれる
「リーダーシップが循環するチーム」です。

逆に「動けなくなってしまう組織」の差はどこにあるのか、
私のもう一つの実体験から考察し、まとめへと繋げます。

こうした「リーダーシップが循環する状態」を、
平時からどう育てるかは、
今後のさんよし会の対話の中でも掘り下げていきます。


*********
イキイキ働きたいカッコイイ大人のベースキャンプさんよし会」
https://s-kando.com/service/sannyoshikai