ドライバーの善意に頼る物流は終わる

チームSKM 吉田です。


物流業界は今、かつてない激変の渦中にあります。
特に注目されているのが「物流制度の強化」です。

今日は、私が工場の現場責任者として、
そして荷主側として経験した出来事を交えながら、
2026年4月に訪れる物流の転換点についてお話しします。


<現場の「善意」が隠してきた物流の歪み>

今から約20年前、2008年頃のことです。
地方工場の責任者を務めていた当時、
仕入先(運送会社)との契約では

・車上渡し
・軒下渡し
・指定場所渡し
 など、荷渡し形態が明確に決められていました。

本来であれば、契約に沿って荷下ろしの
役割分担が守られるべきです。

しかし現場では、
契約が「車上渡し(荷主側が荷下ろしを行う)」
であるにもかかわらず、ドライバーさんが自ら荷を
下ろしてしまう場面が日常的に見られました。

当時の私はそれを
「手際が良い」 「気が利く」 「協力的」

と感じていました。

しかしその背景には、

「一分一秒でも早く次の現場へ向かいたい」

というドライバーさんの切実な事情がありました。

本来これは契約外作業であり、安全面から見ても
望ましい行為ではありません。
現場の慣習が契約と乖離し、
それが「当たり前」になっていた。

これは当時の物流現場の構造的な
課題だったと今は感じています。


<ホワイト物流と、私自身の矛盾>

2019年頃、仕入れ先に対して、
JIT生産方式に合わせた納品方法を
相談したことがあります。

内容は、ドライバーの方に工場内の複数の
部品置き場まで運んでもらうというものです。
もちろん追加費用は価格に転嫁して構わないと
伝えたうえでの相談でした。

しかし仕入れ先からは

「ホワイト物流の考え方に沿い、
ドライバーに過度な負担をかける作業は避けたい」
と断られました。

確かにその作業は、構内に長時間とどまり、
荷役負担も大きいものでした。

当時の私は
「費用を払うと言っているのに」と驚きましたが、

今振り返ると、もう一つ気づくことがあります。
実は当社グループもホワイト物流宣言を
行っていた企業の一つでした。


つまり、「ドライバーを守る」という
ホワイト物流宣言をしていながら。
取引先には負担の大きい作業を依頼していた。
というある種の矛盾があったのです。


私の工場では待機時間ゼロに近い運用ができていました。

しかし当時は、

「荷主としてドライバーの業務範囲や負担をどう設計するか」
という視点までは、十分に持てていなかったのだと思います。


<ホワイト物流宣言から制度強化へ>

ホワイト物流宣言は2019年に始まり、
トラック運転手の残業上限規制(いわゆる2024年問題)を
背景に広がりました。

そして2026年4月からは、

荷待ち時間・荷役時間の把握や報告などの制度が強化されます。

すべてが一律に「義務化」されるわけではないですが、

企業規模や取引内容によって
努力義務・報告義務・管理体制整備など
段階的に制度が強化される形になります。

ただし方向性は明確です。

これまで自主的取り組みだった物流改善が、
荷主の経営責任として強く求められる時代になる

ということです。


<荷主企業に求められる物流改革>

今回の制度強化のポイントとして、
主に次のような取り組みが求められています。

・荷待ち・荷役時間の把握と改善
・物流管理体制の整備(物流統括管理者など)
・契約外作業の是正
・長時間待機の改善

かつて現場で見られた

「ドライバーが自ら荷役をする」
「長時間待機してもらう」

といった状況は、今後は荷主側が把握し、
改善すべき課題として扱われる可能性があります。


物流は企業の活動を支える生命線>

2010年代までは、
現場の工夫やドライバーの善意で回っていた部分が
多くありました。

しかしこれからは

「物流を止めない仕組みを荷主がつくる」

ことが企業の生存戦略になります。

例えば
・バース予約による待機時間削減
・パレット化や荷姿の標準化
・納品時間の分散
・荷役作業の役割整理

こうした取り組みは、すべて荷主側の行動変容が鍵です。

物流は企業活動の「生命線」とも言われます。
生命線が滞れば、どんな優れた経営戦略も機能しません。

かつて見たドライバーさんの急ぐ姿を、
「個人の努力」に頼る時代は終わりつつあります。

2026年4月の制度強化を機に、
物流が「コスト」ではなく企業価値を支える経営課題
として扱われる方向に進むと感じています。


このテーマは、経営者同士の学びの場でもある
さんよし会でも議論しているテーマの一つです。
もし関心があれば、ぜひ意見交換できれば嬉しいです。


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